年齢の近いリリーバーとして、ともに試合終盤を担ってきた。今季限りでユニフォームを脱ぐ決断を下した増田達至に対する平井克典が抱く感情。それは畏敬の念を超えている。唯一無二の存在への思いを明かす――。 文=上岡真里江 写真=BBM 引退セレモニーで花束を渡した平井は増田の右肩に顔をうずめて号泣した
何年も守護神をやり続けるすごさ
9月17日に今季限りでの引退を表明した増田達至が、同28日の引退試合・
ロッテ戦(ベルーナ)で7回表に登板した。
その勇姿を、人一倍感慨深く見つめていたのが平井克典だった。
2017年に
西武に入団して以降、8年間、常にお手本とし、ともに手を携えて戦ってきた存在がほかでもない増田だ。
今年で増田は36歳、平井は33歳という年齢の近さもあり、互いに生ずる、ある意味、自身にしか分からないような年齢による心身の繊細な変化への違和感や戸惑いも、隠さずに話すことのできるかけがえのない“同志”だった。
「頭と体が一致しない。うまく投げられんわー」
ここ数年、そんな増田の苦悩を耳にすることが増えていた。その言葉の重みを、平井は誰よりも理解できた。というのは、自身も19年に81試合に登板し、NPB歴代単独2位となる大記録を成し遂げたが、「次の年、まったく頭と体が一致しなかった」。すでに同じ経験を味わっていたからだ。リアルなリリーバーの勤続疲労との戦いを代弁する。
「そんじょそこらの投球回とか試合数では、そこまで急速に頭で考えていることと体の動きや実際に投げるボールが一気に一致しなくなるという域には達さないと思うんです。 それに、中継ぎは『1イニングだから抑えて当たり前』と思われているかもしれないですけど、その1イニングにかかるプレッシャーって半端ないんですよ。ましてやそれがクローザーとなれば、かかるプレッシャーも(他の中継ぎ投手とは)比にならない。『抑えて当然』どころか、失敗したら、先発投手、チームの勝利を消してしまう責任感を背負っているわけですから、そのプレッシャーの重さというのは、実際にやった人間にしか分からないと思いますよ。 正直・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン