岩手県盛岡市の盛岡南高と、その隣町・矢巾町の不来方高。県立校2校が今年4月に統合し、南昌みらい高等学校として開校した。スポーツ・文化分野でも優れた成績を残してきた両校であり、不来方高は2017年春のセンバツに21世紀枠で出場したのは記憶に新しい。2つの野球部が一つになり、新たな風の吹き始める場所を訪ねた。 取材・文・写真=相原礼以奈 
4月に盛岡南高と不来方高が統合して開校した南昌みらい高の野球部。2、3年の選手17人とマネジャー2人でスタートさせた
統合新設チームのスタート
「不易流行。世の中には、変わらぬものと、常に変化し続けるものがあります」
2024年7月10日、盛岡市永井のきたぎんボールパークで行われた、第106回全国高校野球選手権岩手大会の開会式。選手宣誓を務めた盛岡南高の下田大地主将(当時3年)は、真っすぐに前を見つめて切り出した。
統合前の校名で迎える最後の夏だった。歴史をつないできた先輩たち、関わる多くの人がいて紡がれる高校野球。その変わらない深みと、時代の流れによる歴史の節目を印象付け、「最後の一瞬まで決してあきらめることなく、白球を追い続けることを誓います」と締めた。
1983年創立の盛岡南高と、88年創立の不来方高。ともに小規模校ではなかったが、周辺地域の少子化や生徒の一極集中などを背景に、発展的統合が進められてきた。
野球部の成績に目を向けると、夏の岩手大会では盛岡南高がベスト16、不来方高はベスト4が最高成績となっている。
16年の秋季岩手県大会では、選手10人(マネジャー3人)で臨んだ不来方高が準優勝し、東北大会で青森2位の八戸学院光星高に0対2と善戦。翌年3月の第89回選抜高校野球大会(センバツ)に、21世紀枠で初出場を果たした。センバツでは3対12で1回戦敗退も、
村松開人(現
中日)、
池谷蒼大(現くふうハヤテ)らを擁する静岡高から初回に先制点を挙げるなど、鮮烈な印象を残した。選手10人で奮闘するチームを、アルプス席の大応援団、そして甲子園の高校野球ファンの大きな拍手と声援が後押しした光景は、不来方高の歴史の1コマとして残る。
統合を控えた昨年、夏の岩手大会後から、両校の野球部は合同での練習を開始した。盛岡南高は11人、不来方高は6人と、盛岡南高は単独チームを組める状況だったが、特例の連合チームとして秋季盛岡地区予選を戦った(結果は予選敗退)。
「最初は目標、目的とするところが必ずしも一緒ではなかった。精神的にというか、競技に取り組む根本のところをそろえる必要があった」
チームを指揮する杉田英一監督(元盛岡南高監督)は・・・
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