開幕戦で4打席4三振。それ以降も、黄金ルーキーの泣きどころとして、常に目の前に立ちはだかってきたのが国鉄のエース・金田正一だ。この対談前に、通算200勝(6月6日、阪神戦)、8年連続20勝(同13日、 巨人戦)、リーグ新記録の年間10完封(同19日、大洋戦)、日本新の64回1/3イニング連続無失点(4月30日〜5月27日)と、次々に大記録を打ち立てた左腕だが、この対談ではあっさりと長嶋の実力を認め、その未来まで予言している。ざっくばらんな両者の言葉をお届けしていく。 
大卒ルーキーの長嶋にとって、すでにプロ9年目の金田との対談は、すべてが勉強だった
セオリーどおりの野球
編集部 金田さんは今季、かなりの記録を樹立しましたが、どの記録をつくるのが一番、難しかったですか。
金田 それは連続8年20勝ね、これはちょっと難しいわ。わしゃツイてるからここまで持ってきたけれども、故障もしたし、あんた、あんた、ケガも病気もして、ここまで持ってきたんだ。だから今年はもう、20勝するのに必死よ(笑)。
長嶋 しかも、巨人戦で8年連続20勝をやられたわけですね。
金田 すべてに恵まれているんだね。あんまり恵まれ過ぎているんで、怖くなる。それだけに、もっと努力してね、体にムチ打ってねえ(笑)。
長嶋 無失点記録というのをやりましたねえ。あれも、苦しいでしょう。
金田 あれはねえ、僕は完全試合よりも難しいと思うねえ。完全試合というのは、その日のツキでできるよ。でもねえ、(連続)無失点というのは偶然にできないです。これだけは僕はもう、誇りとしているね。今後破られても、自分がイニングの記録をつくったという誇りを持ちます。どのくらいこれをつくるために自分と戦ったか、いろいろ考えますわ。長嶋君にガチッとホームランをたたかれて、ためになったこととか(笑)。
編集部 長嶋さんはこの間の大洋戦で1試合3本塁打を打ちましたね。
長嶋 さすがにうれしかったですね。初めてですからね、1試合3本は。
金田 なぁに、まだまだ不足で5本やろうと思っているんだろう(笑)。野望の絶えない男なんだからな、君は野心のすごい点では、わし以上なんだから(笑)。またそれを成し遂げる力もあるわ。
編集部 あの日、コンディションは良かったんですか。
長嶋 いつもと同じで淡々としていたんですけどね。ちょうど打った球は、僕の好きなコースでしたよ、3本とも真ん中高めです。
編集部 とにかく全部、場外ですからね。
長嶋 いや川崎ですもの、狭いもの。
金田 大したもんだ。すごい立派だよ。だけど、まだこれからいろいろ多難な道を歩いていかにゃあ(笑)。
長嶋 確かにそうですね。体のケガだけは僕は注意していますよ。ケガでもしたら、もう終わりですものね。
金田 ところが・・・
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