8月14日、81歳で死去した豊田泰光氏。西鉄黄金時代の中軸打者として活躍。引退後は辛口の解説者として名を馳せた。本誌では1993年12月27日号から2013年9月9日号まで1001回にわたる長寿連載「オレが許さん!」を寄稿いただいている。今回はその第1回を再録する。月並みな表現になるが、「豊田さんならどう書いただろう」と思う出来事は最終回の後もたくさんあったし、これからもたくさんあるだろう……。
最近、なんか変な胸騒ぎがして仕方がないんだよ。いま目の前にあるプロ野球という世界がパッと一瞬のうちに消えてしまう。そんな悪夢のようなときが、実際にやってくるんじゃないか、という……。「大げさなやつだ」と思われるかもしれないが、このザワザワするような胸騒ぎは、オレの体の中でなかなか収まってくれないんだ。
Jリーグに押されてとか、いいゲームが少なくなったからとか、そんな表層的な問題じゃない。どうも一番深いところからやってくる。本当にアブナイ胸騒ぎのような気がしてならない。
世界的な規模で経営戦略を展開してきた超一流企業だって、バブル崩壊でアブナイ状態になっているいま、理屈からいえばプロ野球のようなちっぽけな組織体が消えたって一向に不思議ではない。だが、それだけは「オレが許さん!」。そりゃ、そうですよ。自分の青春と人生のすべてがそこにある。男の夢だけで作られた特別な世界。それが何の抵抗もせずにこの世からパッと消えちゃったら、オレの一生は何だったのか、と自殺したくなっちゃうよ、ホントに。
そんなことにならないように自称(他称ならなお結構)球界の語り部・豊田泰光は、他人様に嫌がられようと、なにされようと「オレが許さん!」と言い続けなければならんのです。
カネまみれで、自分だけよけりゃあいいプロ野球じゃ早晩滅びるよ
で、オレがプロ野球をダメにする三悪だと思っているのが、カネ、人間性の低下、そして、球界の私物化。
FA(※連載掲載直前に導入された)や“自由競争ドラフト”でカネまみれになっちゃったプロ野球界。このままいけば早晩破綻してしまうのは目に見えている。プロ野球界に会社更生法なんて適用されないんだから、とにかく潰れる前に手を打たんといかんのです。
これはね、簡単なことなのよ。カネを出さなきゃいい。常識で払い、常識で受け取りゃいいの。ただ、その常識の線引きを万人に納得させられる人々がいない。
そういう人々は一朝一夕には出てこない。これは、そういう人々を作ることができなかったプロ野球という組織自体に大いに責任がある。
これは必然的に人間性という問題につながっていく。
落合(博満。当時
中日)が「一番高いものを出すところに行く」と言っているけど、まあ、これは選手としては当然の発言。言うのはかまわんけどあの表情がよろしくない・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン