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渡辺浩司 コーチ #71

葛藤と苦悩をひた隠し、目覚めのときを待つ

 



 たたき上げ、生え抜きの渡辺浩司コーチが開幕から低迷を続ける打線に真っ正面から向き合っている。決して選手を責めず、敗戦後には「よくやっている」が定例のコメント。あがいてもおかしくない現状にも信念が明確な栗山監督の意図をくみながら、最大限に力を発揮する戦略を模索しながら毎日を過ごしている。

「飛ぶボール」になったと発覚した統一球問題の恩恵とマイナス要素の狭間で闘っている。開幕当初から「飛ぶようになったよね」という今季の使用球。打線が思うように機能しない理由がここにある。8月1日現在で中田がリーグ単独トップ23本塁打、キングを争っている2位がアブレイユで22本塁打。2人の大砲を抱えていることからこれまでの感覚とのズレが生じているのだ。

 近年の常勝球団への歩みの中での打線のキーワードは「つなぎ」。各自が状況に応じたチーム打撃に徹し、局面を打開していくのが特長だった。一番に配置されている陽も15本塁打でチーム本塁打数はリーグトップの77本。だが総得点はリーグ5位と本塁打数=得点に直結していない現状がある。陽は盗塁数29もパのトップ。個が生きても全体では最大限発揮できていない。

 上位打線に比べ、固定できていない下位打線がややひ弱なことも、つながりを欠く要因の1つ。渡辺コーチは打開策をウイットをまぜて、シンプルに説明する。「AKBだよ」。アイドルグループの総選挙のセンター争いになぞらえ、基本に忠実な中堅方向への打撃への意識向上も大きなポイントに掲げている。バントなど小技のミスも例年以上に目立つだけに、すべての精度アップに心血を注ぐ。
オーロラビジョン

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週刊ベースボール各球団担当による、選手にまつわる読み物。

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