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中島卓也 内野手 #56

千載一遇のチャンスから悲願のレギュラーへ

 



 華やかなキャリアはなくても、大輪の花は咲く気配が出てきた。中島卓也が悲願だったレギュラーとしての立場を固めつつある。決して強豪とはいえない福岡工高から08年秋のドラフトで5位指名されて入団。甲子園出場経験もなく、全国的には無名の存在だったが、潜在能力を評価されてプロ野球の世界へ飛び込んだ。着実に成長を重ねて今季、第一線の舞台まではい上がってきた。

 指名経緯のエピソードが特筆ものだ。高校のチームメートは昨秋のドラフトでDeNAに1位指名された三嶋一輝。当時からプロ注目右腕で日本ハムのスカウトがチェックに訪れたところ、中島が目に留まったという。球界全体を見渡しても人材難とされる遊撃手。一番の持ち味がプロに入ってからも矯正しづらい天性の正確なスローイングが、獲得への決め手になった。

 派手さはないが、地道に道を切り開いてきた。現在でも176センチ69キロと細身の肉体をプロ仕様にすることが最優先。打撃で顕著だった非力さの克服も課題だった。オフの自主トレは米ジャイアンツへ移籍した同郷でチームの先輩である田中賢介に同行して師事し、名内野手としてのイズムを吸収してきた。「やるべきことをしっかりやる」と成長過程でも、プレーでも背伸びせず高みを目指してきた。

 今季は開幕当初は正二塁手の筆頭候補だった西川が故障離脱。中島が抜てきに応え、定着しつつある。栗山監督が「タク(中島)がポイントゲッターになってくれればいい」と思い描くほど、打撃面での進境著しい。打順は九番ながらも、上位打線への潤滑油として機能している。苦労人だけに実直な人柄で、将来のチームを背負う人材とも期待されている。
オーロラビジョン

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