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永川勝浩 投手 #20

完全復活の日が迫るクローザー

 



 永川勝浩は悲願達成の瞬間を心待ちにしていた。母校の広島新庄高がプロ注目の左腕・田口の活躍で、今夏の広島大会決勝へ進出。甲子園初出場まであと一歩まで迫った。だが、決勝は0対0で延長15回引き分け再試合。再試合では0対1で敗れ、OBの夢も散った。練習の合間にテレビにかじりつくように見守った右腕は、死闘を戦い抜いた後輩を労った。「良い試合だったんじゃないですか。両方とも頑張った。(負けたのは)残念だけど、甲子園がすべてではない。僕だって県で2回戦敗退。僕は僕で頑張ります」

 高校時代は全国では無名ながら、地元では一目置かれる存在だった。亜大に進学すると才能を開花させ、球団史上初の自由獲得枠で広島へ入団。ルーキーイヤーからクローザーを務め、球団最多の164セーブを挙げる絶対的守護神としての地位を築き上げてきた。

 だが、10年以降は度重なるケガと不振で登板機会を失った。復活の兆しが見えたのは今春のキャンプだ。宝刀・フォークに加え、スライダーを習得し、3年ぶりに開幕を一軍で迎えた。かつての輝きを取り戻すかと思われたが、開幕2戦目のブルペンで右手中指を負傷し、登板機会がないまま二軍降格。復帰したのは7月だった。

 苦労が報われたのは、8月1日のDeNA戦(マツダ広島)。7回から登板し2安打を許し1失点も、2年ぶりの勝ち星が転がり込んだ。

「競ったところで使ってもらえるのはうれしいけど、今日はチャンスをムダにしてしまった自分が腹立たしい」。自身に厳しさを見せた右腕は、6日の阪神戦(同)ではミコライオが負傷した後、緊急登板し再び勝ち投手となった。完全復活の日は目前に迫っている。
オーロラビジョン

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