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多村仁志 外野手 #52

チームに刺激与える百戦錬磨のベテラン

 



 第3回WBC日本代表に選ばれた選手こそいないが、輝かしい初代優勝チームのメンバーに名前を連ねていたのが多村仁志だ。緊張感あふれる舞台で和製スラッガーとして実力を存分に発揮し、3本塁打9打点と主軸として申し分ない活躍を披露した。今季は7年ぶりに古巣に復帰し、強力打線の一角を担っている。

 リーグNo.1ともいえる打線では四番ブランコに注目が集まりがちだが、多村の加入なくしてここまでの破壊力は兼ね備えられなかった。そのことを示したのが5月10日の巨人戦(横浜)。中畑監督が前半戦のベストゲームに挙げた両軍合わせて29安打22得点というノーガードの打ち合いとなった一戦だ。3対10の劣勢から、反撃の号砲を鳴らしたのが多村だった。

 7点を追う7回に代打で出場し、いきなり2ランを左翼席に打ち込んだ。打った瞬間に本塁打と分かる打球を見届けることなく、静かにダイヤモンドを一周。この一発で息を吹き返したチームは1点差まで追い上げ9回の攻撃を迎えた。

 打線がつながり、一死一、二塁で再び多村に打席が回ってきた。「勝ちたい。それだけ。つないでくれたので何とかしたかった」と自身初のサヨナラアーチを右翼席にたたき込んだ。

 この一戦がチームに与えた勇気は計り知れない。投手陣の不振が続いて厳しい戦いを強いられているが、今季のDeNA打線には序盤で少々の点差を付けられてもひっくり返せる雰囲気が漂っている。「みんなに刺激を与えたと思うし、いい効果を与えたい。状態はずっといい」。シーズン佳境へ向けて、緊張感が増す戦いの舞台に百戦錬磨のベテランの存在は欠かせない。
オーロラビジョン

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