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金子誠 内野手 #8

苦闘の20年目の先に見えた新たな道

 



 絶望の淵からカムバックした。金子誠が20年目の今シーズン、選手生命の危機を乗り越え、復活への道筋をつくった。昨年11月に左ヒザを手術。ギャンブルに出たが、シーズン最終盤の9月16日に今季2度目の一軍昇格を果たした。開幕直後の4月に1度昇格していたが、7月上旬に二軍で再調整。今季中にチャンスが訪れるかどうか微妙だったが、不死鳥のように舞い戻ってきた。

 がけっぷちからの価値ある1歩だった。オフ、キャンプを通じて大半がリハビリ生活。単調な毎日を過ごしながら、ようやく体が思いどおりに動くようになった。何年も悩まされていた古傷の苦悩から解消。「ずっと不安はありましたから」。心の奥底には、いつも再発の心配を抱えたままプレーしていた。少しでも長く現役続行をするために手術という決断をした。

 バックアップという立場だが、野球を全力でやれる喜びに、また満ちあふれてきた。二軍で黙々と浮上の機会を待つ日々。これまでは交わることが少なかった若手に助言、指導もしながら、プレーヤーとしての活路も再構築してきた。「いろいろな物が見えた部分もある」。一線を走り続けて小休止したことで、また見えた違う世界。さらに幅を広げる時間になった。

 本職だった遊撃以外に二塁、三塁のほか、代打も託された。23日現在で出場30試合。初めての経験もあり、試行錯誤しながら苦闘の1年間を終えようとしている。完全復活という言葉があてはまるかは第3者の見方によるが、現時点での最高のパフォーマンスは発揮しながら前進を続けている。生え抜きで、世代交代の狭間の中で貴重な大ベテラン。生きた教訓として、また躍動のときを待つ。
オーロラビジョン

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週刊ベースボール各球団担当による、選手にまつわる読み物。

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