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多村仁志 外野手 #52

来季につながるベテランの奮闘

 



 復活という言葉は必ずしも似合わないかもしれない。それでも7年ぶりに復帰した古巣で、ベテランが放つ輝きはまばゆい。多村仁志は勝負強い打撃を武器に、和製スラッガーとしてチームを引っ張ってきた。

 ソフトバンク時代の2010年に140試合に出場し27本塁打を放って以降、出場機会は徐々に減っていた。本塁打も昨年までの2年間は年間4本塁打止まり。度重なる故障に苦しんだ影響もあった。だが今季は長期離脱することなく、3年ぶりの2ケタ本塁打に到達した。

 精神的強さを発揮したのは9月25日の阪神戦(甲子園)だ。前夜にクライマックスシリーズ進出の可能性が完全消滅。5年連続最下位と負けに慣れたチームは、目標を失ったことでズルズルと後退していく危うさもはらむ。だが多村が同点の8回に勝ち越しとなる特大の12号3ランをバックスクリーンに打ち込み、勝利を決めた。

「昨日クライマックスシリーズがなくなった。それでも来年につながる戦いをしないといけないし、常に1つでも順位を上げるためにやっている」。仕留めたのはボイヤーのインハイの152キロ。決して簡単な球ではなかった。「球が速い投手なので。全球種を予測しながら、あとはそこで反応できるか」。百戦錬磨のベテランが見せた一振りがチームを勇気付け、中畑監督も「タム、健在だね」と大喜びした。

 移籍当初から出番を確約されていたわけではなかった。ライバルはラミレスモーガンの外国人選手や、伸び盛りの荒波、ベテラン金城と、外野手の層は厚かった。それでも厳しい定位置争いを生き残り、着々と結果を積み重ねてきた。多村の加入こそが、チームの奮闘の要因の一つとなった。
オーロラビジョン

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