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金子千尋 投手 #19

大記録逃すも圧巻のピッチング

 



 これぞエースの投球。金子千尋が見せた今季最高のピッチングだった。8月21日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)。2年ぶりの2ケタ勝利となる10勝目を挙げた内容がすさまじかった。強打の相手打線をわずか1安打1四球の完封勝利。さらに、今季10完投の中で球数は最少の111球とムダのない内容だった。

 大記録も目前で、いつもは冷静な金子がこのときばかりは色気を見せた。「あの回(8回)を抑えたら考えようと。でも、僕はそういうの持ってないんで」。8回二死走者なし。ノーヒットノーランまであと4人。代打・柳田へ投じた5球目のフォークを右中間へはじき返され偉業達成とはならなかった。だが、その後も乱れることなく淡々と打者を打ち取った。

 直球、変化球すべてのボールがコーナーに決まった。5回には、一死から長谷川に四球を与えピンチを招くも、ラヘアを144キロの直球で、江川はチェンジアップで連続三振に斬って取った。本人も「(すべての球が)全体的にまとまっていた」と納得するほど。打線も糸井が3回一死二塁から左前適時打を放ち先制点を奪うと、4回には李大浩が左中間へ19号ソロを放ち金子を援護。オリックスの役者たちがきっちりと仕事を果たし、チームを勝利に導いた。

 今季の金子は15勝を挙げるなど、沢村賞の選考基準7項目をすべてクリア。200三振を奪い自身初の最多奪三振のタイトルも獲得、プロ9年目で最高の成績を収めた。「来年も同じような(沢村賞選考基準の7項目クリア)成績を残すことができれば。チームが勝てる投球をするだけ」。5位からの巻き返しを狙うオリックスに金子の存在は必要不可欠だ。
オーロラビジョン

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