名古屋の街に春一番が吹くよりも早く、名古屋の春男が出現した。3月13日の
ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)で、谷繁監督は
堂上直倫を遊撃に、エルナンデスを二塁で先発起用した。以降、オープン戦での二遊間はこのコンビ。ベテランの荒木から、8年目の若竜に世代が交代しようとしている。
「誰かがライバルだなんて、考えても仕方ないことです。それよりも自分がやるべきことをやろう。取り組んできた練習の成果を出すためにやろう。そう考えてやっています」
ここ2年は開幕一軍こそ果たしたが、開幕戦でのスタメンはまだない。田中(
ヤンキース)、坂本(
巨人)と同期のドラフト1位。伸び悩んだ堂上直が、この春一気に飛躍しようとしている。
沖縄キャンプではつまずいた。一軍メンバーに選ばれながら、序盤にインフルエンザでリタイア。ただ、二軍組に降格はしたが、自分を見失うことはなかった。昨秋から継続している打撃改造。「とにかくタイミングの取り方を早くするようにしています」。それが少しずつ実を結ぼうとしている。
13日の2安打だけで終わらず、15、16日の
日本ハム戦(札幌ドーム)では計4安打。もともと、安定した守備力への評価は高い。課題だった打撃の成長を実証したことで、レギュラーの座がグッと近づいた。
「打てるようになることは大事ですが、試合ではまずはしっかり守らないと。投手の足を引っ張るわけにはいきません」
堂上直に訪れたプロ8年目の春。かつて甲子園を沸かせたサラブレッドが、ついに覚せいのときを迎えた。