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上沢直之投手・遅咲きの大器がデビュー戦で快挙の白星

 



 感極まった。苦節3年目の右腕が旅立ちの春を迎え、チャンスをモノにした。上沢直之がプロ初登板初先発初勝利の離れ業をやってのけた。4月2日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)で抜てきされ、6回を散発の3安打で7奪三振。「長かった。つらかったときもありました」と感慨に浸った。激戦を勝ち抜いて得た一軍初マウンドで、堂々の投げっぷり。強力打線を剛腕でねじ伏せた。

 薄氷を踏むような争いを勝ち抜いた。春季キャンプは一軍スタート。2月6日に実戦皮切りの紅白戦に先発で起用された。昨オフに首脳陣から登板日を通達され、同世代の若手とのアピール合戦の渦中へと放り込まれた。上沢は「僕は実績がないので結果を出していくしかない」と、オープン戦を含めて開幕まで快投を連発。念願の一軍切符を自力で手に入れた。

 開幕からの2カード、6人の開幕先発ローテーション入り。ルーキー浦野、中村ら同じ本格派右腕で競い合ったが、才能を高く評価する厚沢投手コーチらに、栄えある座を任された。チーム戦略上の理由で敵地、しかも強力打線相手のプロ初舞台。最速146キロの伸びある直球と、カウント球にも使える宝刀フォークを駆使して牛耳った。地道に突き進んできた下積み時代の成果を存分に発揮した。

 入団同期で同じ高卒の近藤ら4選手がすでに一軍を経験している中、腐ることなく待ち、芽を伸ばしてきた。11年に6位入団と下位指名ながらも着実にステップアップを遂げ、プロでの第一歩を踏み出した。花を開かせた自分をまだ戒め、高みへと上ることを誓った。「慢心するわけじゃないけど自信を持っていきたい」。勝負の1年は、まだ始まったばかりだ。
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