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李大浩内野手・四番の責務

 



 思いの丈を込めた。たどり着いた一塁ベース上。李大浩は鳥越コーチが差し出した手を思い切りたたいた。8月29日、敵地での楽天戦は同点の延長10回。李大浩は意を決していた。「四番として、自分で決める気持ちで打席に入った」。二死二塁。楽天の抑え・ファルケンボーグの外角直球を中前へ運ぶ勝ち越し打。最下位相手に苦戦しながら、チームは4時間17分の試合を拾った。

 李大浩は言う。「今までを振り返っても、ああいう場面で打てたことがなかった」。2割台前半の得点圏打率は、両リーグの規定打席到達者を見ても、下から数えてすぐの低さだ。この試合も3回二死一、二塁で空振り三振を喫し、なおさら期するものはあった。

 韓国で2度の三冠王に輝いた。オリックスでの来日1年目、12年に打点王を獲得。翌年も安定した数字を残し、ソフトバンクに2年総額9億円プラス出来高と破格の条件で請われた。小久保が引退し、松中もキャリアの最終盤に入ったチームが欲していたのは、通年で四番を任せられる人材。李大浩は大きな故障もなく、今季開幕から四番を張り続けている。打率は申し分ない。ただ好機での凡退の多さは得点圏打率に表れ、本塁打数もヤフオクドームの広さに影響されてか、伸び悩んでいる。

 延長V打で見せた派手なガッツポーズは、そうした李大浩の心中がそのまま表れたものと言える。求められるのは打での貢献ながら、内野守備にも懸命。「一生懸命やれば、いいものが付いてくる」。昨季4位に沈んだチームのV奪回、日本一に貢献するため呼ばれたことは、十分自覚している。最後に頂上に立ったとき、不完全燃焼のシーズンも少し報われる。
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