失礼な響きかもしれないが、「掘り出し物」だった。2年ぶりのCS進出を決定した陰の救世主が、
市川友也だ。昨年11月に金銭トレードで
巨人から移籍。古巣がドラフト1位で即戦力捕手と評判だった
小林誠司を指名するなどのチーム事情から、事実上の「構想外」で、新天地に恵まれた。正捕手の大野と双璧といえる存在で、今季は躍進してきた。
プロ入り5年目。昨季までの巨人では一軍出場が4年間で計9試合。新人王の資格を保持したまま、第2の人生を歩み出した。
日本ハムは昨オフに鶴岡が
ソフトバンクへFA移籍も、成長著しい近藤が2番手捕手の有力候補だった。市川はあくまで有事の際の「3番手以下」との見方、位置付けで春季キャンプをスタート。派手さはないが堅実かつ、的確なリードで評価を上げていった。
自身のキャリアでダントツの71試合出場。開幕一軍スタートしてCS出場を決めた翌日9月30日に、ポストシーズンに備えて休養するため出場選手登録を抹消された。今季はプロ初適時打を記録し、初本塁打を含めて2アーチも放った。規定打席には到達しなかったが打率.263。激務の捕手としては合格点の数字をたたき出した。「後がないと思ってやる」と移籍当初の覚悟が結果に表れた。
吉川、上沢、中村ら若手投手と相性も良く、台頭する成長株の力を引き出した。球団幹部をして「獲得しておいて良かった」と言わしめるほど、戦力になった。捕手として伸び悩んだ近藤の三塁手起用が誤算だったが、市川のおかげで持ち直した。花を咲かせた苦労人が「まずは守備からアピール」と宣言したとおりに公約を守り、再起の1年にした。