今振り返ってみると、チームはこの1勝で弾みをつけるはずだった。「エース」と「四番」が見事に機能したのだから。相手は優勝した
ヤクルト。V逸したチームにとってはポイントになった会心のゲームだ。
8月28日、甲子園。
藤浪晋太郎が抜群の投球を見せた。2位に迫ってきたヤクルトから8つの三振を奪って、3安打に抑える完封勝ち。本人が「しびれる場面で勝ってこそ価値がある」と胸を張ってみせた。
9月上旬にはマジック点灯という段取りだった。しかも、追い上げてきたヤクルト戦の「頭」をエースで取った。ハーラートップタイ11勝目の藤浪が、その敵を突き放して関西スポーツ紙の1面を独占してみせたのだ。
チームがここから加速する予感は、「四番」のパフォーマンスにもあった。
マウロ・ゴメスが5回に放ったリードを4点に広げる左前2点適時打は、11試合ぶりの打点。本人も「この調子を維持していきたい」とスランプ脱出を感じ取ったはずだ。
上本、
俊介、伊藤隼、坂らの伏兵も働いて、チーム12安打9得点での大勝だった。長期ロード明けで初めての本拠地。残り27試合になった当時の和田監督は「これで乗っていきたい」と手応えをつかんだ。
阪神に、ヤクルト、
巨人、
広島まで加わっての優勝争い。理想的な戦いで一歩抜け出したかに見えた1勝だったが、この後、9月に突入したチームは予期せぬ下降線を描くのだった。
金本新監督は「すべては勝つため、優勝するためにやっていく。勝ちながら立て直す」という。毎年のようにシーズン終盤に成績を下げる体質に、来季こそ歯止めをかけたい。