社会人・NTT西日本から入団10年目。34歳の
藤井淳志は国内FA権を取得した。出した結論は残留。「谷繁監督を胴上げしたい」と言い切った。
考えに考えた。ほかのチームのユニフォームにソデを通すべきか、それとも
中日に残るのか。移籍となれば雰囲気の違うチームでレギュラーをイチから狙う。中日は和田が引退し、左翼がポッカリと空いている。レフトでもう一度、勝負するのか。
決め手は指揮官との電話連絡だった。「自分が後悔しないように」と声を掛けられた。大人としての対応をしてくれた谷繁監督に「監督としていい思いをしてほしい」という気持ちがわいてきた。
ポスト・和田としてひとり立ちしたい。中堅・大島はゴールデン・グラブ賞に輝き、右翼・平田は侍ジャパンとしても活躍してベストナインにも選ばれた。
藤井は今季、キャリアハイの出場試合数だった。118試合は2009年の114試合を上回る。衰えるような年ではない。2年連続で地元の愛知・豊橋で本塁打を放つなど、華もあるプレーヤー。藤井というピースが左翼にはまれば、竜の外野は強い。
「今までも2番手だと思ってレフトを守ったことはないですし、和田さんがいるからとか、いないからとか、そういうことではなくて、自分がどれだけできるか。与えられた役割をどれだけ果たせるかだと思っています」
そう藤井は意気込む。森野、荒木がベンチにいれば、藤井はグラウンドで年長者になる可能性も十分ある。FA権を行使せずに残留を決めた決断。それがどれほどのものだったのか、それを証明する2016年が間もなくやってくる。