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ソフトバンク 内川聖一外野手・ゴルフバッグに詰め込んだ“決意”

 



 内川聖一が持参したゴルフバックの中には“決意”が詰まっていた。ハワイ優勝旅行へ出発する福岡空港。これから連続日本一のごほうびの時間を満喫するはずの男は本気だった。「これだけ長くバットを振らなかったことは初めてですね。ゴルフバックに入れてきました。素振りはしたいです」。

 日本一の歓喜の瞬間、一人だけ、喜べないでいた。左ろっ骨骨折の影響で日本シリーズは欠場。四番であり、主将でもある男は責任を果たせず、悔恨の念を抱いた。体をねじれば痛みが出る。シーズン終了後もリハビリを続け、この仕事道具を握るまでには時間を要した。その「空白」を埋めるために南の島まで「相棒」を同行させた。

 シーズンでは右打者史上初の8年連続打率3割超えを狙ったが、打率.284、11本塁打、82打点。歴史的な快挙を逃した悔しさもまた、ようやく握ることができるようになったバットを離したくない衝動を生む。ハワイでは家族との時間を楽しんだ上、時間を見つけては無心に振り込んだ。

 2015年は故障や不振もあり、出場136試合にとどまった。必要だと感じたのは強じんな肉体だ。来年1月の自主トレは地元・大分出身で鉄腕と言われた故・稲尾和久氏(元西鉄)にちなみ「稲尾和久記念球場」と呼ばれる別府市市民球場でスタートする。

「神様、仏様と呼ばれた稲尾さんの名前の付いた球場でやらせてもらう。稲尾さんが鉄腕と呼ばれたように、それだけ体が強い野球選手になりたい」。祈るような気持ちなのだろう。まさしく「神頼み」だ。「日本一になったけど、日本シリーズに出られなかった。悔しい思いはある」。内川が追求するのは自らが完全燃焼した上で得る最高の歓喜なのだ。
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