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西武 岸孝之投手・不言実行で見据える栄光のマウンド

 



 決して多くを語ろうとはしない。だが、昨年キャンプ初日に監督から直々に託された開幕のマウンドに立つことができなかった悔しさ、今年雪辱に懸ける思いが並々ならぬものであることは、あえて強調するまでもない。2年ぶりの大舞台へ向け、エースが静かに、だが誰よりも熱く闘志を燃やしている。

「すごい悪い年でした」と自ら断言するほど、昨季は岸にとって失意の連続だった。キャンプ初日、開幕戦、CS進出のかかった大一番、チームに勢いをつけたい“ここぞ”というタイミングに限って故障で離脱。人一倍“負けず嫌い”で知られる男だ。最も大事なところで戦力となれなかった自分自身に対し、エースとして、何より一人の投手として、どれほど自責の念にさいなまれたか。報道陣に今季の目標を問われるたびに「ケガをしない。それに尽きます」で押し通す一言こそが、すべてだろう。

 具体的に数字についても、「言わないでおきます。はっきりと言った年に限って良い結果だったことがないので」と今年はあえて明言を避ける。そうしたゲン担ぎにもまた、期する思いの強さがにじみ出ている。

 昨年開幕戦で好投した牧田、成長著しい菊池など、ほかに候補はいなくはないが、実績、実力的に見ても、よほどのことがない限り、背番号11が開幕投手最有力候補か。「ケガさえなく、普通にやれれば15勝はしてくれるはず」と首脳陣たちも全幅の信頼を置いている。

 昨年限りで西口が引退し、名実ともに投手陣をけん引する立場に立つ。「1年間先発ローテーションを守って、その中で結果を残すという形で引っ張れればと思います」

 エースの表情は来る日を見据え、頼もしさと精悍さに満ちている。
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