注がれた執念に応える、強い心が成功の決め手だった。
市川友也が会心のベンチワークを成就させた。6月14日の
DeNA戦(新潟)。難局を託されたのは6回一死一、三塁だった。序盤3回までに鮮やかに3点を奪ったが、その後はゼロ行進。試合が終わってみれば今季最多15三振を喫した一戦だったが、貴重な追加点を生み出した。
このシーンで栗山監督が選択した策はセーフティースクイズ。初球からいきなり敢行してファウルで失敗したが、市川もベンチもひるまなかった。2球目以降もサインは継続。3球連続ボールでカウントは3ボール1ストライクとなったが、最後まで貫いた。市川も「(サインは)ずっと出ていました」と集中を切らさず、その時を待った。
5球目を一塁側へ絶妙に転がして念願の追加点を挙げた。次打者が投手の有原で、DeNA側が敬遠での満塁策を取る可能性もあったが一貫して、ビッグプレーを決めた。市川が「いいところに転がせた。結構デカかったです」という決定打の1点。好リードした有原を、今季のチームの完封一番乗りへと導く隠し味にもなった。
栗山監督が「イチ(市川)が自分1人でしか勝負できない場面。その状況でどうすべきか、ちゃんと勉強ができている」と絶賛した最高級の小技だった。献身的な思いがこもった従順なプレーに、2番手捕手でも輝く市川の存在価値の一端が見えた。