独特の小さなテークバックから、150キロを超える直球を軽々と投げる。
薮田和樹はその速球で、穴が空いた先発ローテーションを埋めた。5月23日、マツダ
広島で行われた
ヤクルト戦。先発の野村が腰の違和感を訴えて3回で降板した。白羽の矢が立ったのが薮田だった。
振り返れば昨季の8月31日(
DeNA戦、マツダ広島)も、先発予定だった福井にプレーボール直前にアクシデントが発生。代役で先発マウンドに上がっていた。
経験が薮田を後押しした。「気持ち的にも落ち着いて入っていけました。中継ぎと同じ気持ちで1人ひとりと思って投げました」。今季最長となった3イングを投げ、3安打無失点。勝利投手となり、見事にチームを救った。翌週の交流戦、30日の
西武戦(メットライフ)も野村の代役で先発をこなし、6回5安打無失点。さらに6月6日の
日本ハム戦[札幌ドーム]でも6回3失点で勝った。代役からチームを救い先発ローテをつかみ取った形だ。
最大の武器は打者が「見えづらい」と口々に言うフォームから繰り出される思い直球。ここにカットボールと、亜大伝統のフォークに近いツーシーム。左打者には特にコンビネーションが有効で、6月8日現在で被打率は.238だ。
「これからも中継ぎと同じ気持ちで、打者1人ひとりで投げていきたい」。シーズン序盤は中継ぎでフル回転。中崎が不在のブルペンでイニングまたぎ、連投もこなした。薮田はその剛球で、自身の存在価値を上げる覚悟だ。