忘れられかけた男が、いま最も信頼を得ようとしている。
松井雅人。数年前、“ポスト谷繁”に最も近い男として注目を集めていたが、昨年はわずか出場4試合。杉山、桂、木下拓と年下の捕手が台頭してきたこともあり、レギュラー候補とは言い難い状況だった。
これまでもインサイドワークには定評があったが、いかんせん打撃が……。打率はずっと1割台。それが今年は──。
「始動を早くしたことで、間が取れるようになったと感じます。これまでもいろいろな指導者の方から言われてきたことなんですけどね。それがようやくというか、できるようになってきた」
今季は4月25日の
ヤクルト戦(豊橋)で3年ぶりのアーチを記録するなど、好調をキープし、5月末までは打率3割台と成長した姿を見せつけた。勝負強さも随所に見せ、代打で出場することもあるほどだ。
苦手だった打撃で結果が出たことで、すべてが好循環になる。6月27日の
阪神戦(浜松)では、1点リードの7回二死満塁からリリーフした又吉を好リード。すべて直球で福留を空振り三振に。又吉も「雅さんが一番確率の高いリードをしてくれました」と感謝し切りだった。
4年目の鈴木、2年目の小笠原、ルーキーの柳ら先発陣に若手が多いだけに、頼れる兄貴分として引っ張っていかなければならない。「しっかりやっていくだけです」。もう“ポスト”が取れてもいいころだ。