石川は先発に転向後白星を重ね、チームトップの6勝(2敗)を挙げている
盤石と見られた先発ローテーションのほころびを繕った。4月12日の
日本ハム戦(ヤフオクドーム)。開幕を中継ぎでスタートした
石川柊太が先発のマウンドに上がった。「中継ぎを7回やるつもりで投げた」。ペース配分など考えずに腕を振り続けた。7回被安打4の無失点。同1日の中継ぎでの今季初勝利に続いて、先発で2勝目を挙げた。
春季キャンプ前日。工藤監督は
和田毅、
千賀滉大、
東浜巨、
武田翔太、
バンデンハークの開幕先発ローテ入りを明言。6番手を実績のある
中田賢一、
攝津正、若手の
松本裕樹、
高橋純平らが争った。石川もその一員だった。ところが、開幕前に左肩の違和感で和田が離脱。そろいもそろって調子が上がらず、開幕から7戦連続で先発陣に白星なし。球団では南海最終年の1988年以来30年ぶりの非常事態で、8戦目にようやく中田が白星をつかんだ。
この窮地を救ったのが育成出身の石川だった。一軍デビューを果たした昨季は、先発と中継ぎで8勝。契約更改交渉では、年俸500万円から同3000万円(いずれも推定)と球団史上最高の500パーセントの大幅アップを勝ち取った。「育成は契約金もないし、年俸のベースも低い。これがスタートラインだと思う」。昇給分で大学時代の奨学金を返済した苦労人だ。
その後は先発ローテに入り、5月9日の
西武戦(メットライフ)では強力打線を8回途中無失点に封じた。「いつもそうだけどラストチャンスのつもり。一試合一試合が生きるか死ぬかの戦い」。直近の2試合はふがいない投球が続いたが、このままで終わるわけがない。雑草魂が石川を支える。
写真=湯浅芳昭