ダイナミックなフォームで剛球を投げ込む
久々に現れた剛腕。映画「メジャーリーグ」でおなじみの登場曲「Wild Thing」が流れ、マウンドに上がるのはルーキーの
鈴木博志だ。最速157キロのふれ込みで入団した右腕は前評判に違わず、竜党たちの希望の星になっている。
圧巻の空振り三振に魅力が凝縮されていた。7月10日の
DeNA戦(横浜)。5点のリードがあったとはいえ、登板は9回だった。先頭は筒香。オール直球勝負の結末は155キロ。日本を代表する主砲のバットに空を切らせ、「球速以上に打者の反応が変わってきているかなと感じています」と胸を張った。
プロでの最速は156キロ。「球速は特に気にしていません」と、事もなげに言い切れるのも、自らの直球そのものに自信を抱いている証左だろう。
球速より球質。多くの投手がそう口にする。鈴木博もまた、その1人だ。自分を見つめ直す契機となったのが交流戦だった。自慢の直球がことごとく弾き返され、8試合で11失点。「疲れと不調が重なった」とはいえ、防御率11・05は散々な数字だった。
「パの打線は気が抜けない。どこからでも一発がある。その意識が強過ぎて、少し小さくなっていたかもしれません」。交流戦後は体を大きく使うダイナミックなフォームを意識。本来の力強い直球を取り戻した。入団時に誓ったのは「160キロ」。己の道を突き進んだ先に、球団初の大台が待っている。
写真=BBM