唐川は中継ぎで輝きを取り戻しつつある
8月2日だった。二軍の浦和球場を訪れた
井口資仁監督は
唐川侑己を呼んだ。部屋にこもった2人はこんな会話を交わしていた。
「試す価値はあるよ」と言った指揮官の提案に、先発通算66勝右腕は「どんな場面でも一軍で投げたいです」と即答した。この瞬間、中継ぎ転向が正式決定した。
地元・千葉の成田高から2008年高校生ドラフト1巡目で入団。1年目の08年4月26日の
ソフトバンク戦(ヤフードーム)では平成生まれのプロ野球選手で勝利投手第1号となった。11年には12勝をマークするなど、昨季まで10年連続2ケタ先発だった。
今季は29歳の誕生日だった7月5日の
オリックス戦(京セラドーム)で初白星を挙げるまで、先発で4試合1勝3敗、防御率5.48。だが、中継ぎ転向した8月7日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)以降は14試合(9月20日現在)で防御率0.52と安定。思い切った配置転換により環境は一変したが、井口監督の期待に応えようとその右腕を振り続ける。
8月30日には海外フリーエージェント(FA)権の取得条件を満たしたが、背番号19には考える余地もないことだった。「昨年、国内FAを取らせてもらったときもそうだったし、若いときから使ってもらった。(行使を)どうこう考えることはない」。
千葉で生まれ、育った。そしてプロ11年目で見つけた新しいやりがい。唐川はまだ、自らが終わったわけではないことを示す新たな仕事場を見つけた。
写真=BBM