田中広輔が厚い壁を破った。6月7日の
ソフトバンク戦(マツダ
広島)。昨年の日本シリーズでチームが6連続で盗塁阻止された捕手・甲斐から、鮮やかな二盗を決めた。四球で出塁し、次打者・小窪の3球目。千賀の投球モーションを完ぺきに盗み、絶妙のスタート。甲斐は二塁に送球さえできなかった。1回には菊池涼が二盗を試みたが、盗塁死が記録されていた。8度目の挑戦で「甲斐キャノン」を攻略。負の連鎖を断ち切った。
実は3月23日のオープン戦(ヤフオクドーム)でも甲斐から二盗を決めている。こちらも会心のスタートだった。「公式戦でも決められたら」と話していたが、有言実行となった。
17年には35盗塁を記録し、盗塁王のタイトルを獲得した。昨年も
ヤクルト・山田哲に1つ及ばなかったが、セ・リーグ2位の32盗塁をマークしている。投手のフォームを観察し、思い切ってスタートを切る。一瞬でトップスピードに乗り、最後は鋭くスライディング。その盗塁技術は、他球団から徹底マークされてきた。
今季は5月終了時点で5盗塁。開幕から打撃不振に苦しみ、出塁率が低下。盗塁にチャレンジする機会自体が少なくなった。5月1日からは指定席だった一番の打順を外れ、下位に回った。続けていた連続試合フルイニング出場も6月20日に635試合で止まることになったが、シーズン終盤の踏ん張りどころ、そしてポストシーズンの短期決戦に向け、田中広の走力は貴重な武器になるはずだ。
写真=BBM