その日は驚くほど早くやってきた。山下航汰は、巨人の育成選手史上初となる高卒1年目での支配下登録を勝ち取った。
7月5日の記者会見では、祖母からプレゼントされたスーツを着て、緊張気味の初々しい笑顔を見せた。「(育成での入団は)落ちるものがない。上だけを目指してやってきました。求められるものはより一層、大きくなる。一軍で中軸を打つことを目標にやっていきたい」と力強く語った。
中日・
根尾昂、
ロッテ・
藤原恭大(ともに大阪桐蔭高)らと同世代で、健大高崎高では2年春のセンバツで2試合連続満塁本塁打を記録。通算75本塁打を誇る左の大砲だ。しかし、一塁、左翼の守備面の評価が低く支配下での指名は得られず、育成ドラフト1位での入団となった。当時の心境を「悔しさしかなかった。周りは喜んでくれたけど、自分としてはこのままでは絶対いけないと思った」と振り返る。
反骨心を胸に、すぐに頭角を現した。三軍もある巨人で、開幕早々から二軍で出番をつかむと、7月末日時点でイースタン・リーグ69試合に出場。同リーグトップに立つ打率.319、4本塁打、26打点。主に三番に座り、今や主軸といえる存在だ。
支配下登録前に一軍練習に招集して打撃を見定めた
原辰徳監督は「レギュラークラスと勝負できる素材であることは間違いない」と大きな可能性に期待。自慢の長打力にさらに磨きをかける時間は、たっぷりとある。
写真=BBM