期待は信頼へ変わっていった。「キャンプ、オープン戦で四番を打たせる。2割9分、20本塁打、80打点できる」と
ラミレス監督が断言したのは1月下旬のこと。佐野恵太へのストレートな思いだった。「主力を育てるためには我慢も必要だが、佐野にはそれだけのポテンシャルがある」。2020年の
DeNAにとって一番の関心事。メジャー・リーグへ旅立った
筒香嘉智の後継者として「主将」の肩書きも背負わせた。
16年のドラフト9位で入団。全体の87人中84番目の指名と、当初の期待値は決して高いと言えなかった。ルーキーイヤーは18試合で打率.095。翌年にプロ初アーチを含む5本塁打を記録し、自力で生きる道を切り開いた。昨年は89試合で打率.295、5本塁打、33打点。代打の切り札として絶対的な存在感を発揮した。代打打率.344。得点圏打率も.367と勝負強かった。
プロ4年目、謙虚さも持ち合わせる25歳。「筒香さんのまねをしろと言われても、簡単にはできない。自分らしく、明るく一生懸命やりたい」とまずはレギュラー確保を目標に突き進んだ。
2月の沖縄・宜野湾キャンプを順調に消化。「故障さえなければ100%、開幕四番で使う」と指揮官に背中を押された。3月11日の
広島戦(横浜)でオープン戦1号。一軍では自身初の1試合2発だった。15日の
日本ハム戦(札幌ドーム)でも3号ソロ。12球団最多の11打点でオープン戦を締めくくった。「さらにレベルアップした姿で開幕できるように。最高のパフォーマンスができるように準備したい」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕日は不透明でも、心技体で充実一途。ハマの新四番に大躍進の予感だ。
写真=高原由佳