その言葉は大げさには聞こえなかった。「去年は本当に大きなけがになってしまった。本当に戦力外を本気で考えた期間があった」。左腰椎の椎間板ヘルニアから復活を目指す福谷浩司は苦しかったこの1年をそう振り返った。
先発に転向した昨季はキャンプ終盤に右肩痛で出遅れたものの、5月6日の
広島戦(ナゴヤドーム)でプロ初先発。6イニングを1失点と好投した。しかし、3日後に腰痛を訴えて離脱。一軍に復帰することなくシーズンを終えた。
2013年にドラフト1位で入団。14年にはリーグ最多の72試合に登板し、2勝4敗11セーブ、32ホールド。15年には抑えとして19セーブを挙げた。しかし、その後は成績が下降。「イップスだったと思う」と打ち明ける。自分の弱さを認め、先発に活路を見出した直後の故障。「クビだと思った」。それでも球団は契約を結んでくれた。
先発ローテ争いは厳しい。大野雄が復活し、柳も右の柱に成長した。梅津、小笠原、山本ら若手も台頭。
ロメロが故障で離脱したが、新人の岡野やベテランの吉見もいる。
立場はわきまえている。キャンプは二軍スタート。練習試合や教育リーグで好投を続けても、なかなか一軍には呼ばれなかった。3月10日の
オリックス戦(京セラドーム大阪)でオープン戦初登板したが、4イニング3失点で二軍に逆戻り。そのままコロナ禍に突入した。
それでも心が折れることはない。「(戦力外を覚悟して)逆にこれ以上怖いものはないのかなと思う。失うものはないという気持ちになった。腹をくくってやるしかない。状態を上げることに集中したい」。もう一度輝く。
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