その言葉は決して強がりではなかった。7月31日の
ヤクルト戦(ナゴヤドーム)。チーム初の完投でようやく今季初勝利を手にした大野雄大は、胸を張ってこう言った。
「ふがいなくて苦しかったですけど、2カ月勝てないのは今年だけじゃなかったので、そういう経験が生きたというか。今まではそのまま崩れていたけど、信じて金曜に投げさせてくれたので、それに応えたいという思いだけでした」
開幕投手を務めながら6試合未勝利は2017年と同じ。3年前は志願して回った中継ぎでも結果を残せず、再び先発に戻っても打ち込まれた。初勝利までには2カ月以上かかり、シーズンも7勝に終わった。しかし、今は違う。どん底から復活した左腕はたくましかった。
「試合つくったんでOKとは言えないですけど、心の中ではOKだと思ってます。そうじゃないと頭がおかしくなるので」
打線の援護に恵まれずに、折れそうになる心を昨季復活の要因となったポジティブシンキングで立て直した。
7月24日の
阪神戦(ナゴヤドーム)は5回1失点で降板していた。救援陣が打たれてチームは逆転負け。ナゴヤ球場での残留練習でベテランの
山井大介、
藤井淳志に苦言を呈された。
「お前が長いイニングを投げなあかん。何してんねん」。火が付いた。「僕だって、5回で代わっていいなんて思っていない」。最後まで投げきると誓った。
7月31日の今季初勝利からが圧巻だ。8月7日の
巨人戦(ナゴヤドーム)、16日の巨人戦(東京ドーム)、そして23日の
DeNA戦(ナゴヤドーム)と4戦連続完投。開幕から1カ月も勝てなかったのが嘘のようだ。エースの力投とともにチームも浮上。遠かった巨人の後ろ姿も見えてきた。
写真=BBM