足のスペシャリストとして、育成出身の3年目、和田康士朗の名前はすっかり広まった。
9月25日現在、パ・リーグ3位の18盗塁はさることながら、相手のスキを突く走塁や広い守備範囲でも「足の威力」をいかんなく発揮している。
井口資仁監督が「先の塁をどんどん狙う」と掲げる中、リーグ2位のチーム計63盗塁を誇るロッテを象徴する存在だ。
最近は打撃、走塁ともに相手に研究され、思うように盗塁数が上がらない。9月13日の
オリックス戦(ZOZOマリン)では、高い走塁意識が光る場面があった。1点を勝ち越した直後の3対2の7回二死満塁で、一塁走者の
清田育宏の代走に入る。
安田尚憲の左前打で二者が生還する間に三塁へ進むと、相手捕手がマウンド方向にボールをこぼしたスキに頭から本塁に滑り込んだ。
抜け目のない走塁で6対2とし、8回表のマウンドには23歳の
小野郁が上がった。5対2の3点差ならば、
唐川侑己や
ハーマン、
澤村拓一といった勝ちパターンの投入が予想される場面だ。8連戦初戦の救援陣をなるべく休ませるという観点でも、足で1点をもぎ取った和田の好走塁には大きな意味があったと言える。
ロッテは今季、和田と
岡大海の2人を「とっておきの代走要員」としてベンチに置いている。和田は「僕の長所は足。足で結果を出せば、打撃もついてくると思う」と役割を自覚し、井口監督は「うちは負けている展開でも、しっかりと足で追い付ける」と大きな信頼を寄せる。
チームは15年ぶりのリーグ優勝に向けて好位置に付ける。優勝争いの終盤戦は、一プレーの重みが増していく。21歳の韋駄天が、勇気ある走塁を見せていけば、チームも球場も一体となってボルテージが高まっていくのは間違いない。
写真=BBM