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中日・福谷浩司投手 戦力外覚悟からの再スタート/復活を遂げた男たち

 


 かつてのドラ1右腕に期待を寄せる人はいても、ここまでやると思った人は少なかったのではないか。

 8年目の福谷浩司。先発転向2年目の29歳は10月12日現在、11試合で6勝2敗、防御率2.78。特に9月は4試合で2勝0敗、防御率1.26と安定感に磨きをかけ、与田監督にも「先発ローテの柱になっている」と言わしめるまでになった。

 2013年にドラフト1位で入団。14年にはリーグ最多の72試合に登板し、15年には19セーブを挙げた。しかし、その後は自慢の直球で空振りが奪えなくなる。制球難から崩れるケースも目立ち、精神面の弱さも指摘された。トレードの噂も耳に入るようになった。

「来年ダメならユニホームが着られなくなるかもしれない」

 17年12月、危機感を募らせた男は自分の特長を知ろうと高性能弾道測定器「トラックマン」の会社を訪ねる。まだ装置がナゴヤドームに導入される前のこと。そこで知らされた事実はシビアだった。

 回転数は少なく、軸も斜め。縦回転で浮き上がるような球とはかけ離れていた。「空振りが取れない真っすぐです」。そんな指摘に動揺した。「でも、受け入れざるを得なくて……」。これが再スタートの第一歩だった。「ゾーンの中で動いてくれればいい」。発想を転換した。

 昨季はプロ初先発で好投した直後に椎間板ヘルニアを発症した。「本気で戦力外を覚悟した」。それでも球団は契約してくれた。今季初先発となった7月28日の広島戦(マツダ広島)は6イニング無失点。8月11日の同戦(同)で1173日ぶりの勝利をつかんだ。「一軍で完封するのが目標」と公言。生きる道を見出し、進化を続ける。

写真=BBM
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