チーム随一のタフネスを誇る右腕、九里亜蓮が1年間先発ローテーションを守り切った。エース・大瀬良の離脱、ジョンソンの大スランプ、そして終盤には野村を故障で欠いた
広島先発陣。台所事情が苦しいシーズンで、プロ7年目の中堅組として若い先発陣を引っ張った。
調子の波が激しいシーズンだった。2月の春季キャンプは一軍で完走も、3月に一度二軍に降格。そこからはい上がり、開幕ローテーション争いを勝ち抜いた。今季初登板した6月24日の
巨人戦(東京ドーム)では7回2安打1失点の快投で、1勝目。2戦目以降は苦戦が続いたが、今季7試合目の8月10日
中日戦(マツダ広島)でようやく2勝目を手にした。再び3試合で勝ち星から遠ざかるも、9月8日の
ヤクルト戦(マツダ広島)で3勝目。そこから勝ち星を積み重ね、11月4日時点で10勝の森下に次ぐチーム2位の8勝をマークした。
転機は3勝目を挙げた9月8日のヤクルト戦だった。この日の試合から投球フォームをワインドアップから、セットポジションに変えた。ワインドアップでは終盤に疲労がたまり、無意識に反動をつけるような動作が精度に影響を与えていたと分析。常にセットポジションから投じることが、制球の安定につながったという。「自分が意図した球を投げ切れるようになった」。安定性が増したことで、ゾーンでの勝負ができるようになり、終盤の怒とうの追い上げにつなげた。
11月3日の巨人戦(マツダ広島)では勝ち星こそ逃したものの、戸郷との投げ合いで9回2失点と完投。自身初の規定投球回にも到達した。「自分の中では一つのノルマとしてやってきた」。九里にとっては飛躍のシーズンとなった。
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