守備だけでなく攻撃面でも貢献してみせる
故郷の宮城も甚大な被害を受けた2011年の東日本大震災を経て、
楽天が球団史上初の日本一に輝いた13年。当時、
西武に所属していた
岸孝之は、複雑な思いを胸に抱いていたという。「対戦相手ながら、東北の皆さんがすごく喜んでいるところを見ていたし、何よりも優勝することでこんなに喜んでくれる方々がたくさんいるんだなというのを思いました」。野球というスポーツが持つ底力を、あらためて感じた。
宮城・名取北高時代は県内では名を知られた存在だったが、甲子園出場は果たせず。その名を全国へ知らしめたのは、大学進学後だった。東北学院大4年時には、仙台六大学野球・春季リーグ戦で18年ぶりの優勝に貢献。34連覇を狙った東北福祉大相手に3連投し、MVPを受賞。大学日本代表にも選ばれた右腕は、06年秋の大学生・社会人ドラフトの希望入団枠で西武に入団した。
17年、FAで楽天に入団。18年は11勝4敗、防御率2.72で初めて最優秀防御率のタイトルを獲得。昨季は11試合に登板して無傷の7勝と、地元のファンを喜ばせてきた。
今年は東日本大震災から節目の10年。「僕の力だけではなくて、チーム一丸となってみんなで喜んでいただけるように頑張ってやっていきたい」と13年以来のリーグ優勝へ闘志を燃やしている。
しかし、開幕から2連勝の後、4連敗で5月下旬に二軍に降格。ようやく復調を印象づける白星を手にしたばかりだが、シーズンはまだまだこれから。地元への思いも胸に秘め、必ず巻き返す。
写真=BBM