夏の地方大会の組み合わせが決まっていく。思えば一年前、高校ナンバーワン右腕の称号を得たのは中京大中京高の高橋宏斗だった。
地元球団にドラフト1位で入団。5月23日のウエスタン・
阪神戦(鳴尾浜)では自己最速を更新する155キロをマークした。まずはファーム、そして一軍との距離を確かめる日々を送っている。
成長の糧になるゲームは6月10日のウエスタン・
ソフトバンク戦(タマスタ筑後)。3回途中8失点で降板。仁村監督から「変化球で逃げるな。真っすぐだけで勝負しろ」と伝えられた。散々な結果を受け止めて前進するヒントを得ていた。
「試合後、寮の自室で自分の投げている動画をまず見ました。見ていたら、すがすがしさすら感じました。こんなに打たれるピッチャーいるのかな、と。不思議な感情でした」
受け止めたら進むだけ。柳とのキャッチボールで「落ちてこないボール」を体感した。下半身主導のフォームへの変更の真っ最中。痛めた経験のある右肘違和感でキャッチボールを中断したのも、フォームを見つめ直す期間となっている。
アマ時代の自己最速を更新できずに引退するプロ野球選手は少なくない。先発なら週一日、中継ぎであれば毎日、最高のパフォーマンスをしなければならない。タイトな日程で高いパフォーマンスを出し続けるために、球速への憧れにふたをして、球威を求めるのは生きていくため。
だが、高橋宏はまだ18歳。スピードもボールの質も追い求めていい。球速と球威が備わったとき、一軍のフラッシュが待っている。
写真=BBM