今季はここまで1試合を除きスタメンマスクをかぶっている甲斐
心身のタフネスさを武器に、
甲斐拓也が「扇の要」を守り続けている。今季は前半戦で全試合先発マスクをかぶると、東京五輪では日本代表の正捕手として投手陣を巧みにリード。打ってはチーム最高打率.385の活躍で金メダル獲得に貢献し、
王貞治球団会長からも「MVP級の活躍だ」と褒め言葉をもらった。2017年に初めてシーズン100試合以上に出場。その後は正捕手となったが、昨季までは先発投手によってスタメンを外れることもあった。ただ今季は、五輪後の後半戦でも先発マスクを任され続けている。
首脳陣や投手陣からの高い信頼の証しだ。前半戦は4位でターンしたが、チーム防御率は12球団でもトップの3.29。相手の分析、日々の試合の反省など、実直な性格からかねて続けてきた努力がしっかりと数字に表れている。チームは、前半戦最終戦から8月20日の
ロッテ戦にかけて球団記録の45イニング連続無失点をマーク。
工藤公康監督は「あいつのおかげで(45イニング連続)ゼロで抑えられた。本当にナイスリード。五輪に行って1つ、2つと成長したと思う」と、その立役者として甲斐の名前を真っ先に挙げる。
投手出身の指揮官は、正捕手となってからも甲斐に対してはリード面などで、あえて厳しい言葉を掛けて成長を促してきた。ただ今季は先発マスクを任せ続けるだけでなく、五輪でもたくましさを増したことを強調。甲斐が真の意味で「正捕手」に成長したことを示す。揺るぎない信頼をつかんだ女房役が、扇の要を守り続ける。
写真=湯浅芳昭