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ソフトバンク・甲斐拓也 レジェンドの言葉を胸に、思いに応える/伝統を背負って

 

正捕手として今季も奮闘を続ける甲斐


 背番号19を背負うようになったのは、2020年からだ。育成出身で正捕手まで駆け上がり、18年の日本シリーズは6連続盗塁阻止でMVP、19年は国際大会プレミア12で日本代表の初優勝に貢献した甲斐拓也。ホークスの捕手では南海時代の野村克也氏以来、43年ぶりの“「19」復活”となった。重い番号だが、連綿と受け継がれてきたわけではない。

 野村氏がホークスを去る際には一悶着あったし、何より『野村克也』という存在が大き過ぎたかもしれない。実際、甲斐も「大丈夫だろうか」と語っており、「野村さんの思いに応えられるような姿を見せたい」と一層の奮起を誓っていた。ブレーク元年だった17年。甲斐は野村さんと初めて対面した際に「次は君に『19』をつけてもらいたい」と声を掛けられたのだという。

 野村さんが野村さんが南海にテスト生として入団した1954年、背番号は「60」だった。背番号が「19」となった3年目に正捕手の座をつかみ、ここから「19と言えば野村」のイメージ定着を励みに、レジェンドの域まで上り詰めていく。野村さんは、自分と同じように母子家庭で育ち、テスト生と似た境遇の育成選手としてプロ入りした甲斐に、シンパシーを覚えていただろうし、それ以上のものも感じていたのだろう。

 偉大な先人は20年2月に旅立った。甲斐が背番号を見せることは叶わなかったが、今も書物を開けば野村氏の言葉がある。自身のリードに罵詈雑言が飛んだ昨季は「人間は無視・賞賛・非難の段階で試される」の言葉に救われた。座右の銘は「功は人に譲れ」。これも特別な言葉だ。

写真=湯浅芳昭
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