シーズンを通してローテーションで回った。11勝と2年ぶり2度目の2ケタ勝利を挙げた。首脳陣から期待され、先発陣の中心に居続けることを義務付けられ、右腕は右腕で自身に期待をかけ続けたシーズンだった。
与田監督の開幕前のコメントは分かりやすかった。「先発なら柳と慎之介(
小笠原慎之介)。この2人が本当の意味で先発ローテの中心にいるチームにしないといけない」。起用に答えた一人は柳。「そう言っていただけて、頑張るしかないと思いました」。
防御率2点台前半で10月に突入するほど安定していた。最多勝こそ逃したものの、最優秀防御率と最多奪三振の2冠を達成。タイトル獲得は何よりも自信になり、大きな財産となる。
終盤のモチベーションの一つが、
西武・
松坂大輔の引退だった。2018年から2年間、チームメートだった。横浜高の先輩で、地元・宮崎から「高校を横浜高にしたのも、松坂さんへのあこがれがありましたから」と振り返る。食事に連れて行ってもらってプロ野球選手の食べ方を知り、多少のアル
コールを口に含み、飲み方を学ぶ。グラウンド内外での振る舞いすべてを勉強した。
引退のニュースが出る前に連絡が来た。文面には「オレの分まで投げてくれ」とあった。「松坂さんには近づけないですけど、教えてもらったこと、一緒に野球をやらせていただいたことを大切にしながら今後も頑張ります」。
タイトルは獲得したが、それでもチームのエースは大野雄。そこに続く存在として、来季は勝ち星を計算される立場に変わる。
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