一人で二足も三足もわらじを履き、勝利に貢献してきた。
ヤクルトに移籍2年目の嶋基宏は、間違いなく陰のMVPだ。今季の出場は昨季よりも少ない17試合だったが、ベンチでの存在感は際立っていた。
ナインが証言する。
荒木貴裕が「先頭で引っ張ってくれていて、それに釣られてみんなも盛り上がっている」と言えば、若き四番・
村上宗隆も「いつも嶋さんが試合前の声出しで元気をくれる」と明かす。
宮出隆自ヘッドコーチも嶋の「言葉の力」の大きさを高く評価している。
「空気を読む力が人よりも長けている。みんなが落ち込んでいるときに面白いことを言って空気を変えたり、やらないといけないときは強い言葉をかけたり。そういう面でも戦力だと思っている」
嶋自身も、雰囲気作りの大切さを実感している。「1個負けて、雰囲気が悪くなると連敗につながる。少しでも良い雰囲気になればと思ってやっている」。もちろん声を出してチームを盛り上げるだけではない。ベンチでは、塩見ら若手に配球などの助言を送ることもある。
そして、本業では巧みなリードだけでなく、バットで“職人技”も発揮する。10月10日の
阪神戦(神宮)では、同点の6回無死一塁から代打で見事に投前犠打に成功。
塩見泰隆の決勝打につなげ、
高津臣吾監督も「すごく大きな戦力だと思う」と存在の大きさを口にした。
チームは6年ぶりのリーグ制覇を達成。栄冠をつかむためには12月に37歳を迎えるベテランムードメーカーの存在が、必要不可欠だった。
写真=BBM