丸佳浩のバットは簡単には回らない。際どいコースのボールを見送り、四球を宣告されて淡々と防具を外しながら一塁へ向かう姿は、この男を象徴するシーンだろう。
「ストライクゾーンに来たボールを振ることに集中して打席に入っています」と頻繁に口にする丸の選球眼は、球界トップクラスだ。強打者ゆえに常に際どいコースを攻められながら、ボール球は振らない。
広島時代の2018年には
王貞治に次ぐ史上2人目、歴代4位タイの130個の四球を選んだ。
「普通に打ちにいった中で、ボールは見逃して、ストライクは振って。ただそれだけです」という天性の感覚で選び続けた四球は、32歳にしてすでに通算880個に上る。NPBの長い歴史の中でも16人しか達成していない通算1000四球に到達する日も遠くない。
今季は6月5日に2019年に巨人加入してから初めての二軍降格を味わうなど、山あり谷ありのシーズンを過ごしたが、ともにチームトップとなる63四球、出塁率.365(20打席以上)をマーク。13年から7シーズン連続で80個以上の四球を選んできたことを考えれば、近年(20年も63四球)の数字はやや見劣りするとはいえ、持ち味の選球眼の良さは光っていた。
「打つボール、打たないボールをしっかり判別しながらやっていくのはすごく大事」と、好球必打を胸に刻む背番号8。際どいボール球の誘いには乗らず、甘いボールは豪快に打ち返す。相手投手にとって最も嫌な打者だ。
写真=BBM