手にした25年ぶりの栄冠。ただ、リーグ制覇を成し遂げても、中嶋聡監督に慢心はない。
2年連続のV、そして日本一へ。
ヤクルトとの日本シリーズに敗れた深夜の神戸で、すでに来季を見据えていた。
「結果として認めるしかない。負けたのも、結果として受け取るしかない。まだまだ集大成といえるところじゃない。これからもっともっと成長していくチームなので」
監督就任1年目での悲願成就。徹底した準備力がペナント奪取の勝因だ。昨オフの大きな補強は、
阪神を戦力外になった
能見篤史兼任投手コーチと、4年ぶり古巣復帰した
平野佳寿のみ。大型補強でなく育成にかじを切り、20歳・
宮城大弥を開幕2戦目の先発に抜てき。眼力的中で、背番号と同じ13勝をもたらした。
捕手出身監督は救援陣の疲労も理解。12球団唯一の3連投なし。連投すると守護神・平野佳を思い切ってベンチから外した。強弱をつける選手起用で、同一カード3連敗なし。今季最長の11連勝で波に乗り、交流戦Vも果たした。
育成と勝利の両立――。極めて難解な問題も、中嶋流で説いた。
「育成、育成と言ってもね。若い選手を使うだけが育成じゃない。チーム全体を熟成。負けグセから勝ちグセをつけること」
三番・
吉田正尚を軸に30歳の
杉本裕太郎を四番に据えて、覚醒させた。
福田周平は志願のセンター挑戦で心意気を買い、
宗佑磨には「三塁、やってみないか?」。今季途中に
安達了一を遊撃から二塁にコンバート……。すべては「オリックスの未来」のためだった。
見据えるのはチャンピオンのみ。来季も手綱は緩めない。
写真=BBM