ファンにとっても、井上晴哉にとっても、昨季はまさかの結果だった。わずか23試合出場で打率.196、1本塁打、6打点。2018、19年に2年連続24本塁打をマークした和製大砲が右手首痛に苦しんだ。
「新たな挑戦をしようとか、自分のためにいろいろやってきたところでの手術は、自分の中でも経験がなかった。こういう形になってしまったけど、もう痛いところはないという逆に安心した部分はありますね」
昨年10月29日、右手関節三角繊維軟骨損傷に対しての関節鏡下で縫合術を行った。二軍での試合中に守備で右手を痛めたものだった。
チームが優勝争いを繰り広げる中での故障に「(チームが)CSに出られたことはうれしかったけど、そこに(自分が)いない悔しさもあって……。メンバーを見ても若い子がいるなあとか思って、でも負けるわけにはいかないというか、そんな感じで見ていました」と複雑な胸中をあったという。
それでも、もう一度、若手とレギュラー争いをしようと、前向きな気持ちでトレーニングに励んでいる。故障したことでこれまでに経験できなかったこともあった。
「(CSの試合を見て)これまで客観的に見ることはあまりなかったので勉強になった。どういう感じでみんなが動いてるとか、自分でやっていると見失いがちになる」
自分ならば、どうやってプレーするかをイメージしながら、ほかの選手との動きを比較して見たのだった。ファンからは絶大な人気を誇る生え抜きのスラッガー。今年こそは『ごっちゃし』のポーズを何度も見たい。“逆襲のアジャ”はここからだ。
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