胸元に直球を投げ続けた。しつこく、しつこく攻めた。5月3日の
阪神戦(甲子園)。先発した小川泰弘は3点リードの6回に最大のピンチを迎えた。二死二、三塁で打席に迎えたのは三番・
佐藤輝明。一発が出れば同点とされる場面で、選択したのは内角直球だった。それも、6球連続。最後は三邪飛に打ち取り、そのまま今季初勝利を完封で飾った。
「(捕手の)
中村悠平も強気でインコースを要求してくれましたし、ストレートをしっかり信じて自分も投げきれたと思います」
今季は開幕投手を務めるも、同戦前までの時点で4試合に登板して0勝2敗、防御率5.68。なかなか本来の力を発揮できず、白星もつかめなかった。中12日で相対したのは、3月25日の開幕戦で3回4失点と苦杯をなめた阪神。なんとか2022年の一歩目を踏み出すために磨いてきたのが直球だった。「出力というか、キレを出すために練習してきた」
原点に帰った。オフシーズンから、セットポジションの際に左足を約1足分三塁側に踏み出す新たな投球フォームに挑戦していたが、同戦から昨年までのフォームに戻し両足をそろえた。「体を大きく使って力強く投げていくという原点に戻って、しっかり足を上げてという意識です」。有酸素運動を増やしたり、遠投の時間を長くしたり。努力の積み重ねがここぞの場面で出た。
「すごい長いトンネルだったので、まず1個勝ちがついて少しホッとしている」。1勝をつかむために挑戦し結果を残す。プロの矜持だ。
写真=BBM