肩を震わせて、高部瑛斗は涙を拭った。左翼手として痛恨の判断ミスだった。
4月6日、札幌ドームでの
日本ハム戦。同点の9回無死一、三塁で左翼線上に上がった飛球に快足を飛ばして捕球体勢に入ったが、最後の最後で迷った。
この打球はフェアなのか、ファウルなのか――。ファウルと判断し、あえて捕球しなかったが、無情にも白球はフェアゾーンで弾んだ。これで痛恨のサヨナラ負けとなった。
それでも、気持ちを切り替えることはできた。「チームには申し訳なかったけど、メンタル的にはたいしたことがなかった」と振り返る。
1日空けた同8日の
オリックス戦(ZOZOマリン)では2打席目に左前打をマークした。
「次の試合でヒットが出た。そこが自分の成長かなと思った。あんなプレーをしても、いつもと変わらない準備して試合に臨めた」
レギュラーとして一年間、試合に出続けるために、必要不可欠なことだった。
プロ3年目。新型コロナに感染し、離脱した期間を除けば、開幕からフル稼働している。
荻野貴司との一、二番コンビはチームの武器となり、盗塁数もリーグトップを独走している。最大の持ち味は、アグレッシブさだ。打席では初球からバットを出し、貪欲に先の塁も狙う。
振り返れば、あのときの守備は、消極的な一面がわずかに顔を出した。
「僕自身のミスで負けた試合もある。こういう経験としてプラスにしていければ……」
今季はサヨナラ打を2度記録している。今季の高部は屈辱をバネとし、確かに大きな成長を見せている。
写真=BBM