悔しさを乗り越え、四番として打線をけん引している牧
経験を積み、着実に成長を続けている。
牧秀悟は開幕から四番に座り、2年目のジンクスをまったく感じさせない打撃を見せている。本塁打、打点はすでに昨季を上回る。好成績の裏には、忘れもしない悔しい思いがあった。
交流戦最終戦だった6月12日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)。2点を追う8回に一死満塁で打席が回ってきた。一打逆転も狙える絶好機。対する
西野勇士は制球が乱れ、3球で3ボールとなった。続く4球目。低めへの直球にスイングすると、打球は痛恨の投ゴロに。併殺打となり、この回無得点に終わった。チームは最後まで食らいついたものの、結局この試合を落とし、黒星で今年の交流戦を終えた。
常にポジティブで、精神面の波を見せない男だが、この打席だけは特別だった。「あれはすごく悔しかった。寝るときに思い出すくらい。初めての感覚」。普段は凡退してもベンチに戻ればすぐに大声を張り上げ、仲間を鼓舞するが「あの打席だけはダメだった」と引きずるほどだった。
振ったことに後悔はない。むしろ押し出し四球を狙うような弱気な気持ちを出さずに積極的に攻められたことはプラスに捉えている。「100対0で張っていた」と直球一本で待っていたにもかかわらず、その狙い球を打ち損じ。勝敗を大きく左右する場面で仕留め損ね、四番の仕事ができなかったことが何より悔しかった。
この頃から調子を落としたが、8月以降はきっちり状態を上げてきた。「いい経験として今につながっている」と味わった悔しさも成長の糧となっている。
写真=BBM