五番・一塁で起用された9月14日の
日本ハム戦(ZOZO)。井上晴哉は、相手先発のサブマリン・
鈴木健矢の前に2打席連続で空振り三振に倒れていたが、それでも同点の5回二死満塁で左前へ決勝適時打をはじき返した。
「2打席空回りしてすごく悔しかったけど、またいい場面で回ってきて、苦しい中で打ててよかったです」
二度やられても三度目でやり返す。同戦で今季9勝目を飾った先発の
佐々木朗希、同点犠飛を放った
中村奨吾と上がったお立ち台で笑顔を見せた。
身長180センチ、体重114キロの巨漢から放たれるアーチも豪快だが、今季はこんな勝負強さが目立っている。主砲候補の
安田尚憲、
山口航輝らを支えるように、若手の調子が落ちてくると、代わって四番で起用されることも多い。
開幕は二軍スタートだった。昨年10月に右手首を手術した影響で、出遅れていたのだ。わずか23試合出場で打率.196、1本塁打、6打点に終わった昨季、二軍での守備中に痛めたものだった。そこから、這い上がってきた。
8月24日の
西武戦(ZOZOマリン)では同点の7回二死一、二塁から左中間へ決勝2点二塁打。このときも前の打席で、左腕・
隅田知一郎に空振り三振を喫していたが、「前の打席で初めて対戦したが、真っすぐがいいんだなと思った。一番、自信がある球で来るだろうと思った」と狙い球を絞った。これが当たった。
リハビリは苦しかったが、打撃を見つめ直すいい機会にもなった。今季初出場となった7月6日の日本ハム戦(ZOZOマリン)では、あらためて感じたことがある。「ファンの拍手が本当に温かかった」――。井上が奮い立つ理由は、ここにある。
写真=BBM