負ければV逸の9月30日の
ロッテ戦(京セラドーム)。極限のひらめきが生きた。福田周平が、ここ一番で“奇策”を決めた。
「まさかバントしてくるとは思ってなかったと思う。そのカウント、そのシチュエーション。(考えたのは)カウントがノースリーになってからです」
3万1442人が集まった京セラドームが一瞬止まった。同点に追いつかれた直後の9回裏二死三塁。3球ボールを見逃した4球目、作戦を決行し、一塁方向にバントを転がした。福田はロッテの
山口航輝のタッチをかわし、三塁走者の
紅林弘太郎がホームに突っ込んだ。
土壇場のサヨナラセフティーバントで歓喜のウオーターシャワーにぬれた。背番号1が一塁ベースに飛び込むと、ナインが駆けつけた。「水じゃなくて……。いっぱいアクエリアスがかかって。悪いやつがいるなぁ。ベトベトです」と爽やかに髪をかきあげた。
この日、首位だった
ソフトバンクがオリックスより先に勝ち、優勝マジックを1としていた。そのため引き分けてもリーグ連覇がついえた一戦。9回に守護神・
平野佳寿が1点差を追いつかれても「野球は切り替えのスポーツ。切り替えてチーム全員で」と福田は深くうなずいていた。
“奇策”で白星を勝ち取り、運命の最終決戦だった10月2日の
楽天戦(楽天生命パーク)で奇跡の逆転連覇をかっさらった。9月上旬に指揮官と話し合い、二軍再調整を施した福田が、電光石火の秘策でチームを救い、逆転連覇の夢をつないだ。
結果で応えた背番号1が、キラリと輝いてみせた。
写真=BBM