現役ドラフトが最高のターニングポイントになることを、戸根は自らの投球で証明する
新たに赤いユニフォームを身にまとう
戸根千明は、心機一転に燃えている。昨年12月に初開催された現役ドラフトで
巨人から移籍。「初めての試みの第1号。これほど注目されて、これを意気に感じない人間はいないと思う」。胸囲120センチの大胸筋を、さらにふくれ上げさせるように鼻息荒く決意を示した。
オープン戦初登板は2月25日の巨人戦(那覇)。二番手でマウンドに上がり、日大の先輩で昨季まで
広島に在籍した
長野久義とも対戦して二飛に仕留めた。「感無量じゃないけど、何かすがすがしい気持ちでマウンドに上がれた」。今後シーズンで何度も対戦する古巣相手に1回無失点の好投で、新たな一歩を踏み出した。
チームは中継ぎの整備が最重要課題の一つ。だが、アクシデントが続く。キャンプ終盤に勝利の方程式の候補の一人だった矢崎が左内腹斜筋の筋挫傷で離脱。さらに守護神・栗林は腰の張りで侍ジャパンを離脱。開幕には間に合いそうだが、不安も残る。元来から救援左腕が手薄だっただけに、巨人時代の8年間158試合登板と経験豊富な左腕は貴重。現役時代に対戦経験のある
新井貴浩監督が高く評価する「投げっぷりの良さ」を武器に、さまざまな場面で大車輪の働きが期待される。
チームの“天敵”にも相性がいい。昨季、左腕5投手が打率.526、3本塁打と打ち込まれた
ヤクルト・
村上宗隆を、通算6打数1安打に抑えている。「現役ドラフト組が、いい形で活躍して盛り上げていきたい。一矢報いるじゃないけど、爪痕を残していければ」。移籍活性化を目的に導入された新制度をきっかけに、新天地で輝きを放つ。
写真=湯浅芳昭