プライドと不安を胸に、必死で腕を振る菅野智之の背中で、背番号18が踊った。
右肘の張りで出遅れていたエースは、6月11日の
ソフトバンク戦(PayPayドーム)で今季初登板。5回4安打2失点の粘投で、遠かった今季1勝目をつかんだ。
「これに勝るものはないと思う。これまでもたくさん勝たせてもらいましたけど、将来忘れることのできない1勝になった」
通算118勝目は大きな壁の向こうにあった。プロ11年目の今季、成長著しい
戸郷翔征がWBCに出場したこともあって開幕投手はこの男と見られていたが、3月18日の
日本ハムとのオープン戦(東京ドーム)で右肘の張りを訴えて緊急降板。ファームでの調整が続いた。
チームが投手陣の不調もあって一時は最下位に沈む中でも、コンディショニングと投球フォームの修正を続け、一軍のマウンドに立てない悔しさを味わった。「つらい時間でした。もちろん、自分自身が招いたこと」。だが、このまま終わるわけにはいかない。伝統のエースナンバーを背負う者として――。
1935年の
スタルヒンに始まり、歴代9人だけが背負ってきた巨人の背番号18。原監督が復帰した2019年に入団時から着けた「19」から変更したが、今ではすっかり自分の番号にしている。
「まだまだ取り返すチャンスはある。ボロボロになるまで腕を振りたい」。遅れてやってきたエースが、ここから生き様を見せる。
写真=BBM