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中日・小笠原慎之介 投手王国の柱として/甲子園のヒーローは今

 


 その記憶は鮮やかだ。2015年8月20日。夏の甲子園決勝(対仙台育英高)。同点の9回に決勝ソロを放った。そのまま胴上げ投手。投手による決勝戦Vアーチは春夏通じて初の快挙だった。

「長い歴史で僕が初めてというのをニュースで知って、うれしかったです」と笑顔で振り返る。

 当時の記憶をひも解く。ダイヤモンドを一周して、三塁ベンチ前で門馬敬治監督(現創志学園高監督)と抱き合った。「個人的に感動的。でも、監督は打った瞬間を見ていなかったみたい」と小笠原が苦笑する。

 指揮官はベンチ内で選手交代などの準備をしていたという。歓声で振り返り、現実を噛みしめる。ホームインした背番号1と抱擁していた。

「もう1つ。僕、高校通算3本塁打です。しかも、甲子園のあの一発は公式戦1号」。柵越えなど狙っているはずもない。広い右中間席へ吸い込まれる打球を確認して「やっちゃった、と思いました」と振り返る。

 高卒のドライチで入団して8年目。今季は2度目の開幕投手を務めた。狙うのは3年連続規定投球回、2年連続2ケタ勝利だ。

 エースの大野雄大が左肘手術から9月に一軍復帰予定だが、立浪和義監督は「慎之介が先発陣の中心にならないといけない」と期待を掛ける。振り返って甲子園V投手の肩書きはどうか。

「プライドばかり高くなって、足元が見えないときもありました。肩書きとちゃんと向き合うまで時間が掛かりました」。ひと皮むけて、竜の先発陣をしっかりと引っ張っている。

写真=BBM
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